2024年5月24日〜9月12日まで、アメリカ西海岸を南北に縦断するロングトレイル Pacific Crest Trail(パシフィック・クレスト・トレイル/通称PCT)を歩きました。約4,200km、112日間の歩き旅でした。
このページでは、PCTを歩くために出発前に準備したことをまとめています。
パーミット、ビザ、海外旅行保険、通信手段、役立つアプリなど、実際に歩く前に必要になる情報を簡単に整理しました。
これから歩く人、興味があって調べている人にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。
準備編
PCTを歩くためには、パーミット、ビザ、保険の手続きなど、出発前にやることが多いです。
許可証(Permit)について

PCTのパーミット、PCT Long-distance Permits
PCTを歩くためにはPCT Long-distance Permitsが必要
PCTを通しで(メキシコ国境からカナダ国境まで)歩く場合、PCTA(Pacific Crest Trail Association)が発行する Long-distance Permit(ロングディスタンス・パーミット) が必要になります。
ロングディスタンス・パーミット(PCTA)
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目的:自然保護・トレイル利用者管理
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対象:1シーズンに500マイル(約800km)以上歩く場合
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申請時期:例年 11月〜1月頃(年2回の抽選)
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費用:無料(任意で寄付可)
- パーミットの枠:3月~5月で1日計50人、1回目の抽選で35枠開放、2回目で15枠開放
- デジタルだけでなく、紙で携帯する。1回だけチェックありました
PCT パーミット抽選は少しクセがある
ロングディスタンス・パーミットは 抽選制 ですが、この抽選はただの「当たり / 外れ」ではなく、ログインできる順番が割り当てられる仕組みになっています。
- 抽選のための事前登録を行う
- 抽選日に 各自に「ログイン可能時刻」が割り当てられる
- 割り当て時刻になった人から順にログイン → 出発日を選択できる
つまり、早い時刻が割り当てられた人ほど、選べる出発日の選択肢が多い。
ログイン時刻が遅ければ、人気の 4〜5月前半はすでに埋まっているということも珍しくない。1回目の抽選日ではそもそも全枠埋まっている可能性もある。
実際の体験談
私は2年連続計4回この抽選に参加しましたが、割り当てられたログイン時刻は、どれも遅い時間帯でした。なので、2回目の抽選時に空いていた中で一番早い出発日の5月24日を選択しました。
理想の出発日を取れなかった人は「キャンセル待ち」 という選択肢が有効です。抽選直後から数週間〜数ヶ月にかけて、出発日を変更する人、キャンセルする人が一定数発生します。
そのため、希望日が取れなかった人は、定期的に空き枠をチェックするのがおすすめです。聞いた話ですが、ブラウザの拡張機能を使うと、キャンセルが出たタイミングで通知を受け取る設定もできるらしいです。
目安として、3月前半と5月後半は比較的空きが出やすい、4月中旬〜5月頭は人気で埋まりやすい。ゆっくり歩きたい人は4月中、そこそこ歩けそうな人は5月前半あたりがいいと思います。
California Campfire Permit
カリフォルニア州内の国有林(National Forest)や BLM 管轄地で、以下を使うために必要な無料パーミット。
- ガスストーブ
- アルコールストーブ
- 固形燃料ストーブ
たとえ、Campfire(焚き火)を一切しなくても、クッカーでお湯を沸かすだけでも、この許可証が必要です。
取得方法は簡単です。
こちらからアクセスできます。
- オンライン講習(3分)
- 簡単な理解テスト(選択式・常識レベル)、間違えても問題なし
- 名前を入力 → PDFが発行される
取得は無料です。PDFをデジタルと紙で携帯。
アメリカ B2(観光)ビザについて
観光・旅・個人の休養目的でアメリカに滞在するためのビザで、PCTを含むアメリカ三大トレイルを歩く人が取得する代表的なビザになります。
日本パスポートの場合、通常はESTA(ビザ免除)で90日まで滞在可能ですが、PCTは4〜5ヶ月かかるため90日以内に収まらず、B2ビザが必要です。
※私は以前スーダンに入国しており、ESTAを使えない立場でしたが、隠すことなくすんなりとビザを取得できました
アメリカ B2ビザ申請の流れ
- DS-160(オンライン申請フォーム)の作成
- ビザ申請費(US$185)支払い
- 面接予約を行うサイトへ登録、予約
- 面接
- ビザ(パスポート)受取
アメリカ B2ビザを取得した感想・体験談
私は1月に上記の3まで行い、面接を3月初旬に行いました。B2ビザを取得した感想は、入力事項などよりもシステムが煩雑で面接予約までがめんどくさいです。
1. DS-160(オンライン申請フォーム)の作成
最初にオンラインで提出するDS-160が曲者でした。
- 入力自体は難しくない
- ログインエラー・タイムアウトが頻発
- 保存しながら進める必要がある
2. ビザ申請費(US$185)支払い
- ビザ代:185ドル
- 支払い時の為替レート(29,600円支払い)
- クレジットカード払い
- 単純に高い
3. 面接予約を行うサイトへ登録、予約
なかなか希望日に面接予約できないと聞いていました。面接地によっても状況が違うらしいです。
- DS-160 の確認番号を紐づけ
- 大阪領事館で面接予約
- 3ヶ月先までほぼ埋まっていた
- 毎週木曜だけ大量に空きが出ていた
4. 大阪領事館で面接
面接官がPCTを知っていたからか、面接自体はあっさりと1分以内で終わりました。
資料提出はありませんでしたが、残高証明や「PCTとは何か」を説明できる資料は準備しておくと安心です。
- 準備した資料は一切使わなかった
- カウンター越しで立って面接(チケット売り場みたい)
- その場で口頭でビザ承認を伝えられた
5. ビザ(パスポート)受取
面接後のパスポートの管理は代理店が行います。代理店まで取りに行ける人は取りに行ったほうが良いでしょう。私のような地方民は以下の流れになります。
- 代理店に送料を支払う
- レターパックなのに3,410円
- 面接後約1週間で手元に届いた
海外旅行保険について
アメリカは医療費が非常に高い国です。
骨折・脱水・高山病などで救急搬送 → 入院となった場合、100万円〜数百万円以上になることも珍しくありません。
特にPCTは僻地で活動するため、レスキューやヘリ搬送が絡むと、金額が跳ね上がります。
保険会社の回し者でもなんでもないですが、安心して楽しくPCTを歩くために海外旅行保険の加入をおすすめします。
私が加入した海外旅行保険
- ジェイアイ傷害火災保険(t@biho たびほ)
- 契約期間:5ヶ月
- 保険料:約10万円
- 帰国が早まったため、未使用期間分の返金あり
高いと感じる人も多いと思いますが、今までの世界を旅してきたバックパッカー経験から個人的には「これは必要経費」と考えています。
海外旅行保険に加入すべき理由
- 金額が大きく、払えない額になる可能性がある
- クレジットカード付帯保険は最大90日まで
- 安心してPCTを楽しむことができる
※医療費払い戻し制度について
日本の国民健康保険 / 社会保険 には海外療養費制度があり、海外で支払った医療費の一部が日本基準に換算されて還付されます。
しかし、以下の理由から海外旅行保険に加入することをおすすめします。
- 先に全額自己負担で支払う必要がある
- 還付額は日本の診療費基準
- 手続きが煩雑
保険に入ることで「もしもの心配」を背負わずに済みます。
安心して歩けるなら、その10万円には十分価値があると感じました。
通信(海外SIM / eSIM / Garmin inReach)について

Garmin inReach mini2
PCTでは電波が入らない区間が多いですが、町に降りれば電波はあるし、基本的にカフェなどでWi-Fi通信はできます。トレイルでは峠で電波が拾えることもあります。
様々な連絡・ルート確認・天気チェック・町の情報収集・登録のためにも、通信手段は用意しておくのがおすすめです。
日本のSIMをそのまま使う(楽天モバイル)
私は、日本でもeSIMで楽天モバイルを使っており、アメリカでもそのまま使用しました。
- 月2GBまで無料でローミング可能
- 電波状況に応じて、アメリカ三大キャリアの中から自動接続
- 電話は使わない
海外でも使える日本のSIMカードは思っていたよりもかなり役立ちました。
アメリカ現地でeSIMを契約
本当は楽天のSIMカードだけでアメリカ滞在中やりくりする作戦でした。
しかし、トラブルが発生し、その解決のために現地で電話する必要が出てきて、急遽契約することになりました。
私はUS MobileのeSIMを契約しました。
- 契約はすべてネット上で完結、すぐ使える
- 最初の3ヶ月間で計45ドル
- その後、月々25ドルで使い放題(プランによる)
- キャリアを選べる、Verizonがおすすめ
- 大量のデータ通信はいらないと感じた
他にも、格安SIMのMint MobileやVisionを使うハイカーもいました。
日本人PCTハイカーで、ソフトバンクのアメリカ放題を使う人もいて条件は悪くなかったです。
衛星通信デバイス Garmin inReach Mini2は必需品
PCTでは スマホが圏外になる状況が日常です。
怪我・体力低下・道迷い・山火事など、トラブルが起きた時に助けを呼ぶ手段として、私は Garmin inReach Mini2 を持っていました。
- 本体代と月額料金約2,000円が必要経費
- 日本語対応
- SOS対応
- 充電はかなり持つ
- 衛星通信でメッセージのやりとりできる
- 天気予報確認できる
- トラッキング可能
日本人ハイカーは所持率が低かったのですが、ほとんどすべてのハイカーが、Garmin inReach Mini2を主として衛星通信デバイスを持ち運んでいました。
衛星通信は保険のようなもので、もしものときは自分の安全は自分で確保できるようにそう思って持っていました。
役立つアプリ
ルート・ナビゲーション
FarOut
PCTハイカーのほぼ100%が持っている地図アプリでほぼ必須だと思って良い。
地図のダウンロード価格は高いが、非常に有益で、むしろないと困るレベル。
PCTの地図・水場・標高・テントサイト・最新コメントなど確認可能。
Googleマップ
大きめな町におりたときの移動や情報収取に便利。公共交通機関に対応しているところもある。
Maps.me
予備の地図として、ダウンロードすることで町もPCTの地図も最低限使える。
山火事とPCT通行止めチェック
Watch Duty
アメリカの山火事の状況を知ることができる。
PCTAのTrail Closures
PCTA公式のトレイル山火事情報、トレイルが開いているか閉まっているかはここで確認する。
その他のアプリ
WhatsApp・Instagramは、出会ったハイカーと連絡を取り合うことや近況と情報の共有、FacebookにはPCTやトレイルエンジェルのグループもあります。SMSまたは電話でやり取りすることもあります。
2025年はInstagramで日本人PCTハイカーのグループがあり情報交換していました。
ChatGPT(AI)
日記整理から相談、トラブル解決にも役立ちました。海外の企業とメッセージのやりとりをすることがありとても頼りになりました。なお、起業CSもChatGPTを使っていると言っていました。電波さえあれば翻訳もできます。
Google翻訳(オフライン辞書DL)
FarOutはもちろん全部英語ですし、Google翻訳で翻訳している日本人ハイカーにも会いました。私は使っていないが、カメラ翻訳も役立つっぽいです。

もっと、英語を話せたらなーと思う日本人PCTハイカーは多い。自分も含めて。準備として英会話は超おすすめ。
PCTを歩くための準備は少し手間がかかります。
最低限、パーミットとビザはしっかりと確保しておきましょう。
あとは歩きながらでもなんとか整えられます。
